すたすたすた
野茂英雄が引退する。そう聞いてまず思い浮かべたのは、すたすたと歩く後ろ姿だった。
「トルネード(竜巻)」と呼ばれる豪快なフォームから繰り出す速球とフォークボールで三振の山を築いた快投とともに、メジャーリーグへの道を切り開いた開拓者としての功績が高く評価される。退路を断って日本のプロ野球界を後にし、腕一本でひとつひとつ実績を積み重ねた。その姿に魅せられた選手が次々に海を渡り、今日の日本選手隆盛につながった。
それ以上に貴重なのは、野球好きの若者が野球を続けられる環境を作ることに情熱をそそいだことだ。長期不況のあおりで社会人野球チームが次々に休部に追い込まれた90年代に、米国の独立リーグチームの共同オーナーになって日本の若者にメジャー挑戦の機会を広げた。そのかたわら、自身がかつて所属した新日鉄堺を母体にしたクラブチーム「NOMOクラブ」をつくり、プロ選手も生み出した。無愛想だが常に正面から目標に立ち向かう姿が、多くの人を惹きつけた。
近鉄バファローズ時代、福岡ドーム(現ヤフードーム)のマウンドからベンチへ引き上げる後ろ姿が目に焼きついている。ややうつむき加減に、無表情で、すたすたと歩く。相手の主力を三振に仕留めたときも、ノックアウトされたときも、姿勢や歩調に狂いはない。メジャーの球場でもその姿勢に変わりはなかった。無言の背中が実に多くのことを語りかけていた。(2008.7.22.)
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コメント
そういえば、彼の笑顔だけは記憶にない。思い出す彼は頬の筋肉一つ動かない。
野茂という名前は知っていても、その活躍や功績を思い出せないのは、単に私が野球に興味がないだけでなく、その無愛想さが原因のような気がする。
引退後のスポーツ選手は様々な道を行くが、これから無言の背中は少々厄介かもしれない。
投稿: min. | 2008年7月23日 (水) 13時04分
1回目のノーヒット・ノーランを達成したとき、チームメイトにもみくちゃにされながら、遠慮がちに右腕を上げていたのが印象強いね。
投稿: はかせ | 2008年7月27日 (日) 13時28分